妙に微笑ましい気持ちになっていると、奥の扉が開いて綺麗な女性が入ってきた。

(見た事は無いけど、きっと関係者の人だろうな。)

何となく見ていると、その後引っ張られる様に入って来たのは平畠さんだった。
驚き過ぎて、声が出ない。
この前と同じスーツ姿。
その腕を見ると、女性の腕が仲良さそうに絡まっている。

「あっ。」

思わず小さく声が漏れる。
体に衝撃が走った。
何を話しているのかこの距離では全く聞こえないが、平畠さん達がマネージャーの横に座り仲良さそうにしている姿をこれ以上見ていられず、私は大きく目を逸らした。

「どうしたの?」

右田さんが不思議そうにしている。
私は無理矢理笑顔を作った。

「何でもないです。」

ただ、ショックだった。
何故そんな気持ちになっているのか良く分からないが、あんな平畠さんの姿は見たく無かった。

「あ!」

僅かに右田さんが声を上げる。
一点を見つめ、表情が固まっている。
目線の先を辿って見ると、彩と斎藤さんが楽しそうに喋っている。
(斎藤さんも懲りないな...。)
なんて無気力に思うと、固まっている右田さんに耳打ちをした。

「彩、斎藤さんに取られちゃいますよ。」

その言葉に大袈裟に反応すると、右田さんは立ち上がると、凄いスピードで二人の元に近づいて行った。

「行っちゃった。」

一人になった私は、いたたまれなくなり席を立った。