2、3言、言葉を交わすと、右田さんは急に黙ってしまった。

(右田さんが用もなく私の隣に座るとは思えなかったから、何か用事があると思っていたのに...。)

私は思い切って、右田さんに話し掛けた。

「あの、何か話しがあったんじゃないですか?」

右田さんは驚いた顔をすると、みるみる顔が赤くなった。
反応の意味が良く分からずに首を傾げていると、右田さんは耳打ちをする様な仕草をしたので、わたしも耳を近づけた。

「彩ちゃんって、彼氏いるのかな?」

「えっ!」

驚きで思わず声が出る。
『しー』っと、右田さんはその声を慌てて制した。

「いないですよ。」

右田さんに頭を下げると、私もトーンを落として言った。

赤くなった顔や耳打ち、先日の彩の話しがふと蘇って来る。
『斎藤に近づかないで。何かされたら、俺に直ぐ言って。』
それって、ただのヤキモチじゃないのかな?

「良かった。」

右田さんはそう言うと、ホッと胸をなでおろしている。

(右田さんって、カワイイ人だな。)

何を考えているか全く分からない、どこかの誰かさんとは大違いだ。