「じゃあ、夏川さんお幸せに!かんぱーい!」

その声に、一斉にグラスが合わさる音が響いた。
彩がノリノリで参加表明をしたので、私も寿退社する夏川さんの送別会に行く事にした。
こうやって見ると、案外遊園地のスタッフが多いのに驚いた。
居酒屋の大部屋は人で一杯だ。
私は烏龍茶をテーブルに置くと、ため息をついた。
目の前の美味しそうな料理にも、中々手が出ない。

数日前の出来事から、気まずくて斎藤さんとは話しをしていない。
大学の教授の手伝いかなにかで、平畠さんはあの日からずっと休み。
なんだか心の奥がモヤモヤとしている。

「溜め息ついたら、幸せが逃げちゃうよ?」

気が付くと、隣に座っていたはずの彩がいなくなっていた。
声の主は右田さんだった。

「隣、いいかな?」

そう言うと、右田さんは彩が座っていた座布団に腰掛けた。