バイトが終わり、私はユニフォームから私服に着替えた。
あの後も色々話しをしたが、斎藤さんは思っていたよりも危険な人ではなさそうだった。
女子更衣室から出て、ロッカールームに入り自分のロッカーのドアを閉め、鍵を差し込んだところで声を掛けられた。

「加奈子ちゃん、今日はお疲れ様。」

声のする方を見ると、斎藤さんが立っていた。

「あ、お疲れ様です。」

私も、挨拶を返す。
どうやら着替え終わるタイミングが重なったらしい。

「そう言えば、加奈子ちゃんも送別会行くの?」

私の背中の方で、右田さんがロッカーを開ける音がする。

「はい、まあ。」

きっと彩も行くと言うはずだが、私一人だけだったら断るつもりだったので、少し曖昧な返事をする。

「可奈子ちゃんって彼氏いるの?」

私はがロッカーの鍵を回したと同じタイミングで、斎藤さんが口を開いた。

「いないですけど。」

突然、思いもしない質問をされて驚いた私は、後ろを振り向きながら言った。
と、距離があったはずなのに、斎藤さんが私の直ぐ近くにいる。

「あっ…あの?」

顔が近づいてくる。
私は、驚きの余り動けなくなってしまった。