ひとしきりからかい終わった所でそう言うと、彩はワザとらしく頬杖をついて私を見上げた。

「右田さんいわく、『平畠は可奈子ちゃんの事、気に入っている』らしいよ?」

一瞬、彩の言う事が理解出来ずに首を傾げた。

「私達のバイト初日が終わった後、男子更衣室で平畠さんが『しょっぱなから俺に言い返すとは面白い』って言ってたらしいよ?」

(いや、それは気に入っているとかいう話しじゃ無い様な...。)
私は思わず苦笑いを浮かべた。

「平畠さんって仕事に真面目じゃない?軽い気持ちで入った
バイトのコって平畠さんの教育が厳しくて直ぐ辞めちゃうんだって。」

彩の言葉に妙に納得出来た。
あの厳しさは、行き過ぎている。
わたしは、辞めて行ったバイトのコに静かに同情した。

「だから、新人が平畠さんにハッキリ意見をいうのって珍しいんだって。自分から話し掛けるのは殆ど社員だけらしいし。」

(あまりにも酷い言われ方だったから、カッとなって思わず言っちゃっただけなんだけどなぁ。それに、怖いからって一言も喋らなかったら仕事にならないと思うんだけどなぁ?)

何か平畠さんも少し可哀想に思えてきた。

「最近、平畠さんの機嫌が良いんだって。何か楽しそうらしいよ。」

(それはただ、平畠さんのSっぽい所がくすぐられているだけなんじゃないのかな?)
楽しそうに話す彩にそんな事言っても、聞いてくれそうに無かった。