『使えると思ったのに。』
『惚れんなよ?』
『いつもの調子戻ったな。』

...私の事を気遣っている様にも受け止められる言葉。
レストランの一件で助けて貰ったという事や、仕事に対する姿勢。
でも口が悪いし、人をバカにしているし。
考えている事が全く読めない。
でも...

(...でも、初めて『お前』じゃなくて『安浦』って名字で呼ばれたんだよね…)

普段呼ばれた事が無いので、そんな事で意識してしまう。
それに、引き締まった身体...。

「ちょっと、加奈子?何ボーっとしてるの。」

その声にハッと我に返る。

「いやいや!ボーっとしてないよ。」

私は急に恥ずかしくなり大きく首を振ると、とっさに否定した。

「してたよ。あ、平畠さんの事考えてたんでしょ?」

彩の指摘に驚いたが、平静を装う様にコーヒーを口に含んだ。

「好きになっちゃったとか?」

その私の行動に、彩はニヤニヤしながらテーブルに身を乗り出す。

「もう!違うってば!」

止まない追求に、私は必死に否定をし続ける。
彩は、そのんな私の様子を楽しそうにからかった。