「全く、少しは使えるかと思ったらコレだ。」

着替え姿を見ない様に背中を向けると、不意にそんな声がした。

「えっ!?」

その言葉に驚いて振り向くと、平畠さんは丁度シャツを脱ぎ終わって、上半身裸の状態だった。

「わー!すみません、すみません…。」

私は、顔を手で覆うと呪文の様に繰り返す。
もう、恥ずかしいさと申し訳なさとで頭の中がグチャグチャだ。

「おい、何勝手に発情してんだ?」

その言葉に、指の隙間から盗み見ると、平畠さんは既に替えのシャツに袖を通していた。
順番にボタンを止めていく指は長くとてもキレイだ。

「惚れんなよ?」

そんな私を見た平畠さんは、片頬を上げながら鼻で笑った。

「絶対に惚れません!」

私は、とっさに大声で否定した。色んな感情のゴチャゴチャや、指がキレイだなんて思いは全て吹き飛んでしまった様だ。

その声に、平畠さんはいつもの無愛想な顔に戻った。

「調子戻ったな?」

その言葉に私は動きが止まった。

「二度と同じ失敗はするなよ?」

そう言うと、平畠さんはスタッフルームを出て行った。