今日は働き始めて、始めての日曜日。
本当はアトラクションと入場ゲート担当なのだが、人手が足りないらしいので園内のレストランに入る事になった。

私は、高校生の時ファミリーレストランでバイトをしていたので、急遽手伝う事になったのだ。

「―で、これがオーダー端末ね。使い方は分かる?」

レストランの責任者の田中さんが一通り説明してくれる。

「はい、似たものを使った事あるので大丈夫です。」

私は端末を手に取って、ボタンを押しながら頷いた。

「オッケー。じゃあ、レジは僕らがやるから、安浦さんはホールの接客をお願いね。後は、メニュー覚えてて。」

そう言ってその場を去っていく田中さんに頭を下げる。

「ありがとうございました。」

私はメニュー表を開いて写真を見つめた。

「くれぐれも粗相の無いようにな。」

その声に驚き、目線を上げると平畠さんがいた。

「ひっ、平畠さんもココですか?」

思わず声がうわずる。
いつものユニフォームと違い、ウェイターらしい白いシャツに黒いベスト、蝶ネクタイ。
それは、細身の体に良く似合っていた。

「そうだが?」

『何か問題でも』と言わんばかりに、冷たい視線を向けると、私の前をスタスタと通り過ぎて行った。

前言撤回。
ちょっとでも似合ってると思った自分が悔しい。

昨日はあの後、ホラーハウスで変な空気になったと思ったのだが、まるであのやり取りがなかったの様に初日同様「ボタンを押すタイミングが遅い」などと、怒鳴られたのだ。
変な空気になった思ったのは私だけだったのだろうか。

それを思い出し、急に気が重くなった。

何か、平畠さんって良く分かんない人だ...。