私と平畠さんは、並んでモニターの前に座っていた。
モニターでお客さんの姿を確認すると、仕掛けのスイッチを押すという作業だ。
平畠さんは、モニターを真剣な眼差しで見つめている。

(確かに、黙っていれば顔はカッコいいのにな…)

私は、昨日の彩とのやり取りを思い出し気付かれない様にを盗み見た。

「何だ?」

目線はモニターに向けたまま、平畠さんは口を開いた。

「いえ、何でもないです。」

あの目線で、何故私が盗み見ていたのが分かったのかが疑問だったが、それより何より「黙っていればカッコいい」など口が裂けても言えず、あわてて誤魔化した。
その言葉に平畠さんは深くため息を付いた。

「お前、単純だから分かり易いんだよ。『言いたい事があります』って顔に書いてあるぞ。」

視線だけ私に向けながら言う平畠さんには、誤魔化しは効かない様だ。
私は怒られるの覚悟で聞いてみた。

「松本さんに、『このホラーハウスをプロデュースしたのは平畠さんだ』って聞いたんですけど、本当ですか?」

流石に「カッコいい」とは言えず、さっきの疑問をぶつけてみた。
平畠さんはチラッとこちらを見たが、直ぐに視線を戻した。

「そうだ。」

怒鳴られなかったので、私はホッと胸を撫で下ろした。

「何でプロデュースしたんですか?」

安心した私は、思わず質問を続けてしまった。

(しまった!怒られるかも。)

身構える私に反して、平畠さんは目線を私に向けたままでいる。
『何故お前に言う必要がある?』…なんて、悪態をつかれるかと思ったのだが…。

「俺がガキだった頃、ここのお化け屋敷の陳腐さに逆に驚いてな。」

私は、平畠さんが質問に答えてくれている事に驚いた。

「今、こんなに怖いのにですか?」

会話がまともに成り立っている事に驚きながらも私も言葉を続けた。
その言葉に平畠さんは一瞬笑った様に見えた。

「あからさまな機械音がして不細工な人形が出てきても、何も面白くないだろ?」

(出てくる人形が怖かったら、それなりに驚くと思うけどな…)

私はそう思ったが、黙って平畠さんの話を聞き続けた。