「無いですぅ。」

私は、ふてくされながら、ワザと嫌みたっぷりに答えた。

「そんな変な顔だったら、人を笑わせる事くらいは出来そうだな。」

嫌味で言ったのが分かっているのかいないのか、平畠さんも意地悪そうにニヤリと笑う。

「変な顔って!」

私は、たまらず言い返した。
嫌みで返したのに、逆にその何倍もの嫌みで返されてしまった。
しかし、平畠さんは愉快そうに鼻で笑っている。

(もしかして、遊ばれてる?)

平畠さんは、私の感情をワザと逆撫でして、その反応を楽しんでいるようにも見える。
いや、反応を楽しむというより、元から性格が悪いだけかもしれない。
どっちにしろ、迷惑で腹が立つのは同じだ。

色々思いを巡らせているうちに、平畠さんの足が止まった。
ホラーハウスに辿り着いたのだ。

「裏の従業員入り口からはいるぞ。」

そう言うと平畠さんは、植え込みの横にある小道を進んでいった。
私も後に続く。
よく見ると、建物の丁度裏手に目立たない様に扉がある。
平畠さんはためらい無く中に入っていった。