「今日はホラーハウスの仕事を教える。」

本日も、朝から上目線…。

相も変わらず、私の事はお構いなしの平畠さんは、そうとだけ言い事務所を出るとグングン敷地内を進んで行った。

(この人は『人に合わせる』って事、絶対無いんだろうな。)

小走りで追いかけながら、自然と溜め息が漏れた。
それに気付いた平畠さんが、視線だけ私に向ける。

「何か文句あるのか?」

「…いえ。」

鋭い目線に何も言えない。

(刃向かったら、何を言われるか分からないし。)

私は、遠くに見えるホラーハウスに目線を移した。

この遊園地のホラーハウスは怖いと、地元ではチョット有名だった。

私も、中学生の時に友達とホラーハウスに入り、大泣きした覚えがある。
脅かされて怖いというのは勿論だが、視覚だけでなく、聴覚や嗅覚など五感全てにまで及ぶ恐怖があるのだ。
そんな、所の裏方を見れて、嬉しいような怖いような、複雑な気分だ。

「あの、ホラーハウスの仕事ってお化け役ですか?」

余計なことを考えると、また平畠さんに見透かされて怒られそうなので、仕事の事を聞いてみる。
すると、平畠さんは大袈裟に溜め息をついた。

「そんな訳ないだろう?お前みたいなド素人に、人を脅かす技術があるのか?」

確かにそんな技術は無いが、もう少し別の言い方をしてくれても良いのに…。とは、口が裂けても言えない。