「マネージャーの話聞いてなかったのは、可奈子でしょ?」

そう言う彩に、私は反論できなかった。
確かに、悪いのは私だ。
それは分かっている。でも、余りにも酷い言われ方に反発心が先に立ってしまうのだ。

うつむいてふくれる私に、彩は諭す様に話続ける。

「でも、『平畠さんて、どんな人ですか?』って聞いたら、右田さん言ってたよ?『口は悪いけど、仕事は出来るし、バイトの中では一番信頼出来る』って。」

私は彩の話を聞きながら、右田さんの姿を思い出していた。
あの、優しそうな右田さんが言うのだから、そうなのだろう。

「っていうか、平畠さんバイトだったんだ。無駄に偉そうだから、社員さんかと思った。」

私は、ワザとイヤミっぽく言った。

「うん。本業は学生で、大学?か何かで研究してるらしいよ。」

彩は、思い出すように宙を見ながら言った。
平畠さんの話題が続き、私はあまりおもしろくないが、どうやら彩は興味があるらしく、右田さんから仕入れた情報を色々話してくれる。

それにしても、平畠さんが大学で研究…。
何となくイメージ出来る気がする。
(頭堅そうだし。)
私は、メガネの奥で意地悪そうに光る瞳を思い出した。