「安浦可奈子です。宜しくお願いします。」

私は、言葉が終わるとペコリと頭を下げる。
しばらく床を見つめて顔を上げると、みんな温かい拍手をくれた。

海外留学を考えている私は、お金を貯めるためにアルバイトを探していた。
そんな時友達の彩に誘われて、夏休みを利用して近くの遊園地でアルバイトをする事になった。

今日は、その初出勤日だ。

「―と、言う事で今日からこの2人が新しく入ります。みんな、分からない所は色々教えて上げて下さい。以上、解散。」

私達の自己紹介も終わり、チーフマネージャーの内田さんが朝礼の締めの言葉を言う。
目の前のスタッフ達はそれぞれの持ち場に向かう様で、ぞろぞろと部屋から出て行く。

「じゃあ、さっきも言ったけど、詳しい仕事内容は渡辺さんは右田君に、安浦さんは平畠君に教えてもらってね。」

そう言うと、内田マネージャーも部屋を出ていった。
その姿を見送り、彩と並んだ状態で立っていると、男性が一人近付いてきた。