ふらふらになりながら、家を目指す。




警察が来る前に、あたしは逃げた。もし、見つかりでもしたら、バスケの仲間の迷惑になる。


それだけは絶対に駄目だった。






家の前には、父が立っていた。あたしの姿を見つけると、息を荒げながら駆け寄ってくる。



「詔!!!!」


父は大きな胸板にあたしを押しつけて抱きしめた。そして何度も「よかった」と繰り返す。


あたしの頬を両手で包みこみ安堵の息を吐く。
父はあたしの頭から流れる血を見つけ、一気に顔が青ざめた。




「詔!!この怪我如何したんだ!!」


肩ぐらいの髪をわしわしと撫で上げる。





「……ちょっとね……。
それより、お父さん。あいつともし、本当に結婚するっていうならさ……」


あたしは所々どす黒い血が染みつく腫れあがった拳を父が見えるようにかざす。




「あの女を、この2倍……、いや4倍、6倍になるまで、こうするから……。
覚えておいて。」





抱きしめられていた手を離し、玄関を潜る。


横切る時に見た父の顔はより一層肌の色を失くしていた。