そんな獣のような衝動が身体中を巡っていた時だった。



誰かと肩をぶつけた。

「いッ!!ってぇなあっ!!」



あたしは俯く顔をゆっくりと動かす。

こちらを眉間にしわを寄せながらガンつけていたのは柄の悪い4人の男達であった。




「てめぇ、ぶつかっておいて謝らない気か?ぁあ?」


活きの良い声を上げる。あたしは涙を手の甲で荒々しく拭う。
彼等を無視して歩き出そうと、足を踏み出す。




しかし、不意に腕を強く掴まれ、彼等に囲まれてしまった。





「聞いてんのかっつってんだろう……」

「うるさい。黙れ。」


あたしは低い声で彼等をねめつける。




顔を真っ赤にしながらあたしの腕を掴んだ男は、拳を振り上げた。


「ちょーしこいてんじゃねぇぞ!!」
勢いに乗り、他の男達も襲い掛かってくる。

避ける事も無くあたしは腕を掴んでいる男の拳を浴びた。ガッと容赦ない音が繁華街に響き渡る。





反動でのけ反りあたしは歩道の真ん中へと飛ばされ、強く頭を打つ。痛みで、脳がぐらぐらする。


……殴られれば、この父に対する怒りがどうにかなるのではないかと思った。

しかし、それは無かったみたいだ。あたしの心は解き放たれたライオンのように唸りを上げ、どろどろとした気持ちが、抑えを失くした。