誘拐 ―おまえに決めた―


「はい。あーん」


リクは手に持ったパンを差し出してくる。



口は、開けない。



「あくまで犯人の施しは受けないってわけですか」

「そう」

「じゃあ仕方ないね」



膝立ちになったリクは、

私の上半身を抱き起こし、顎をつかんだ。




今度はぐっと口を閉じる。



その瞬間、リクは顔をくしゃくしゃにして

まるで某面白キャラクターの物真似をした。