後ろで威嚇するような銃声が聞こえる。
弾が届くような距離ではないが、男のトイチと女の私の速度の違いを見せつけるように近づく足音。
「マイ、がんばれ」
「マイなら行ける、まだ走れるだろ」
「マイ、もう少しだから」
リクは何度も励ましてくれる。
足元も前もほとんど見えない。
真っ暗闇。
道しるべは、リクの手だけ。
左手に罪の証である大金を持ったリクの右手だけが、私の希望なら私はその手を離してはいけない。
でももう走れない。
本気で。
息も続かないし、足もすっごく痛い。
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