「だから俺はクルマに言ったんだ『お袋さんの治療費が必要だろ?』ってな。
クルマは最初渋ったが、少し揺すぶればすぐに落ちた。優しい言葉かけてやれば、ちょろいもんさ。
他の2人も金に困った闇金のお客様さ。強盗には人数が必要だからな。でも仲間は必要ない。俺に必要なのは金だけだ」
トイチが話す間、リクから手を通じての伝言は続く。
<お・れ・が・り・ょ・う・て・を・あ・げ・た・ら>
両手?
<10・び・ょ・う・か・ぞ・え・ろ>
リクは私に指で言葉を伝えながら、器用にトイチとの会話をこなす。
「だから、殺したのか」
「そうだ。しかも表向きにはクルマの自殺だ。『銀行強盗をした罪の重さを悔やんで』な」
トイチは高笑う。


