気づかれていないかとトイチを見るが、意気揚々と話し始めるのを見てほっとする。 「リク、クルマは始めからいいカモだったよ。あいつの家は、零細の車の部品工場だっただろ」 「ああ」 だからクルマは『クルマ』なのか。 リクとトイチのやり取りは続く。 「ところがこの不況だ。昔はそこそこ金持ちだったらしいがな。 経営が傾き、銀行も金を貸してくれない。その上、お袋が病気になったらしくてな。どうも立ち行かない。 そこでクルマのオヤジが、俺がいたこの闇金融に手を出したってわけだ。まあ、よくある話だ」