誘拐 ―おまえに決めた―


占いとかおまじないとか、そういうのは信じられない。


子供の頃、何度でも神様や仏様にお願いしたけれど、私の願いが彼らに通じたことはないから。


神様なんて、いない。




そう思っているはずなのに、少しの願いをかけて人間は、いや私は何かに祈ってしまう。



(誰か、私の願いを叶えて。助けて)

と。癖のように。



そんな弱い自分は好きじゃない。

もう変わらなければいけない。

後が、ないから。



「え?」

リクは短い言葉で問う。



「願いはかけるものじゃなくて、力づくで手に入れるものだよ」

私は、私の言葉に妙に力が入っているのを感じた。