土手に戻ってみると、あいつが川を眺めていた。
俺たちは、サンドイッチをたらふく食べた。ホットコーヒーもうまかった。
暫く無言で川を眺めた。
「絵は出来たの?」
「おかげさまで」
「このとおり。」
「おーっ。」
傑作だ。
素晴らしい絵だ。
俺は絵には全く詳しくないけれど、今まで見た中で一番好きな絵だった。
「他人のフィルターを通したものが、こんなに好きとは。驚きだ。」
「時を止める方が驚き。」
「あー、でも一生で一度しか止められないから。」
「いいの?今使っちゃって。」
「いいのいいの。時間止めるだけじゃ世界平和は守れないから。何せ止めるだけなんだからさ。」
「ふーん。」
それからまた、暫く川を眺めた。
「そろそろ、戻しますか。」
「うん、そうだね。ありがとう。助かりました。」
「(笑)オレだけ急に自転車引いてっから、道に戻ってから動かすな。」
「だね。」

本当は、何も言わなくても思うだけで時間を動かせる筈なんだけど、一応、儀式的に
「時間よー、動けっ。」
言うが早いか俺はあいつに手を振って、色がクールダウンしていく風の中へ自転車をこぎだした。(終)