彼はチョコレートが嫌い

「この車、車体のラインが綺麗だと思わない?黄色もさ、目立つのは確かだけどさ、悪くないと思うんだよ?それにさ…」

一生懸命、愛車についてフォローを始める。

正直、あたしは車は雨に濡れず移動出来ればどれでも同じだと思ってる。

だから、彼が何を言おうとまったく興味が持てなかった。

彼の長い説明はあたしの耳を通り過ぎていく。

でも、低すぎず落ち着いた彼の声はもっと聞いていたいと思った。

BGMみたいに。

あたしは途中で自宅への道案内と適当な相槌をうちながら、彼に気が済むまで話しをさせることにした。

ちらっと運転する澤木さんはを見ると、やっぱりカッコイイ。

あたしはこの日、美形というイキモノは、前から見ても横から見ても、死角がないもんなんだな、と知った。