彼はチョコレートが嫌い

呆気に取られたあたしにウインクして、彼はさっと運転席に戻った。

「俺さ、星和学院にコネがあってね、新学期からちょっと通うんだよ」

さっさとエンジンをかけてアクセルを踏む。
流石に一気に加速した車から逃げ出すことは出来ない。

「乗せて貰えて助かりましたけど…強引ですね」

あたしは正直どう対応すべきかわからなかったけど、わからないから腹が立って来た。

顔もいいしスタイルもいいしお金持ちっぽいけど、なんであたしは自分の意志と関係なく助手席に乗せられてるんだろう。

「あ、ごめん。怒った?」

あたしの声が刺々しかったせいか、澤木さんはあたしに気遣うような声をかけた。

でも、あたしを見ない。
あたしはイラッとして、

「澤木さんは子供のころ謝るときは人の目を見てって教わらなかったんですか?ほんと謝る気があるなら失礼ですよ。てゆーか、黄色いスポーツカーって目立ち捲くりでうちの近くに行きたくないんですけど」

すごくどうでもいいことを早口でいっていたら、ついでに本音も出ちゃったけど、あたしは気付かなかったことにして彼を睨みつけた。

大丈夫、あたしより大人だし!

「んー、この車、高いんだよ?つまりそれだけ人気があるってことなんだよ?聞いたことないかなー、フェラーリ。
悪いけど、俺は運転中はよそ見しないからね。後でゆっくり目を見て話すね」

愛車をけなされたことがショックだったらしい。澤木さんは悲しそうに答えた。