彼はチョコレートが嫌い

「自転車は、後からご両親と取りに来たらどうかな」
澤木さんは顎に手をあてた考え中のポーズであっさりと言った。

「君は星和学院の生徒でしょ?」

確認するようにあたしの制服をちらりと見る。

「これから俺も関係者になるわけだし。何より君は放っておけないしね」

澤木さんはうんうんと一人頷いて、あたしの目線を合わせるようにかがんだ。

美形の顔は心臓に悪い。

あたしの脈拍はかなり上がったみたいで、ドキドキが止まらない。

なんか汗も倍増した気がする。


「すごい具合悪そうだからさ」

澤木さんはあたしから自転車と荷物を取り上げた。

さっさと荷物を車に積み込み、自転車を止めて鍵をかける。

「ここなら、自転車盗むようなのもいないし大丈夫だよ」

安心させるためかニッコリ微笑む。

ほんときれいな顔…と見とれてる場合じゃない!

「いやいやいや、うちの親の車にも載りませんしっ」

荷物を取り戻そうと慌て車に駆け寄ると、ドアを開けてバッグに手をかけたあたしの体は突然ぐいっと押された。
バン、と勢いよくドアが閉まる。

「?!」

あたしは助手席に押し込められた形になり、振り返ると澤木さんがニヤリとする。

顔に似合わず強引だ!!