彼はチョコレートが嫌い

「や、あたし位の髪の長さの女子高生多いし」

彼の言う『さーちゃん』とやらがどんな子かわからないけど、きっと同じ高校なのだろう。

たからこの制服を見て声をかけたに違いない。

あたしは自分の制服に視線を落とす。

どこにでもあるような、夏用の白いシャツとチェックのスカートの制服。

胸元の青いリボンがかわいいんだけど、暑さにだらけた今のあたしみたいに緩んでいた。

「暑いんで、失礼します…」

あたしは出来る限り動揺を隠して、自転車を押し始めた。

そうだ。

この照りつける日差しの中、一秒たりとも止まってなんかいたくないんだった。

「あ、のさ!」

ちょっと焦ったような声が私の耳を打つ。

「その自転車、パンクしてるよね…?」

遠慮がちな彼の指摘は、正しい。

私は無視するわけにも行かず、足を止めて振り返った。

「確かに暑いし、坂道だしさ」

とても人の良さそうな、そしてなんだかキラキラした笑顔。

「これも何かの縁だよ。俺の助手席も空いてるし、乗りなよ。家まで送るよ?」

善意の固まりのような笑顔にあたしはまた衝撃を受ける。

誰かに乗せてって欲しいと心底願ってたけど!

こんなカッコイイ人の助手席にも乗ってみたいけど!!



なんか怪しくないか??!!