携帯を充電しながら、電源を入れる。

起動する間に制服を脱ぎ、手近にあったワンピースに着替えた。

携帯が続けて着信を知らせる。
私はいつものように誰からのメールかを確認した。

仲良しの木村アユミ、お母さん、メルマガ…そして見慣れないメアド。

登録されていないそれを、また迷惑メールだと思った。機械的に削除しようとした時、手が止まる。

「イズミ…サワ?」

izumisawaで始まり、数字とアルファベットを組み合わせたメアド。これって迷惑メールじゃないんじゃないか?

慌て受信を押す。

イズミサワが私の知ってる『あの』イズミサワだとすると、何が書かれているのか気になる!

学年でも評判の目立つ男子だからだ。

ニコニコしてた澤木さんとは正反対の、滅多に笑わない顔も頭もいい泉沢智哉。

確かアユミが彼の大ファンだった。でもサッカー部の彼は部活命で女子には構ってくれないといってなかったか?

『泉沢だけど。木村にアドレス聞いた。突然ごめん。チャリが置いてあってなんか気になったから。大丈夫?』

シンプルなメール。
女友達から来るデコ文字でキラキラピカピカのメールとは対象的だ。

硬派な彼は、メールもカタイ。

あたしは変なとこで納得しながら、次のメールを開く。

差出人がアユミ、と表示されたメール。

『ちょっとちょっとあんた何してるの?どこにいるの?!泉沢君にあんたのメール聞かれた!!話しかけられてうれしいけど、何であんたのアドレスなのー!?連絡ちょうだい!!!』

泉沢とは打って変わって、ニッコリ笑顔とガッカリ顔がテンコ盛りのメールだ。