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「あら、史絵、いつの間に帰って来たの。遅いから携帯かけたのに出ないから心配したわよ?」
エプロン姿のお母さんが、右手に持った携帯をあたしの目の前でブンブン振った。
「携帯、充電切れちゃって…着替えてくる」
「暑かったでしょ。スイカあるからね」
あたしは軽く頷いて、リビングを後にした。
なんだか頭がぼうっとする。
あんなにカッコイイ人と車という密室にいたなんて信じられない。
というか、これは現実?
勉強机(小学生から使って来たからいい加減買い替えたいシステムデスク)に荷物を放り投げ、あたしはベッドに倒れ込んだ。
自分は周りの子達より、シビアだと思ってた。
男は顔じゃない、中身だ!と信じてたし、顔も性格もいいお金持ちなんてあたしの側には現れないことも知ってた。
だってあたしは至って普通の女子高生だから。
強いていうなら、親譲りの細い身体(細い=スタイルがいいってわけじゃないのはわかってる)とまめにケアするサラサラヘアーには自信がある。けど、あたしくらいの子はどこにだっているんだ。
彼−澤木さんみたいな人なんて、滅多にいない。
