「なんだか楽しい笹林だね」

最初は何もない笹林で、とても寂しいところだとも思った。

でもそこには人が知恵を振り絞って作ったメロディや自然と調和した作品があった。

人が生きている証を見て、私はホッとしたのと、先ほどまで感じていた都会から逸脱した気分を感じていた。

「あそこに人がいますよ。う~ん、何かのお店みたいですね」

優子は道沿いにずっと先にある小さな露店を指さした。

私と優子が近づくと、小さな露天販売をしている人がたくさん見えてきた。

どれも屋台に小さなランプをつけているようで、陳列された商品が橙色に輝いていた。

屋台に近づくと、様々な音色や香りがしてきた。

まず最初に目に付いたのはたくさんの風鈴を売る店だった。

木でできた大きな棚にたくさんの風鈴がぶら下がっていた。

「可愛いですね。この風鈴は手作りかもしれませんね」

風鈴には様々な絵柄があり、金魚やスイカ、雲や虹など夏の風情を感じさせる様々世界がそこには描かれていた。

風鈴屋の横には小さな子供が座って番をしていた。

「この風鈴は手作りですか?」

優子は店番をしていた子供に話かけると、子供はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。

優子が慌てて椅子を押さえると、店番の子はゆっくりと椅子に座り直した。

そして深く被っていたベーグル帽を押し上げて、私と優子の姿をじっと見つめて静かに頷いた。

「綺麗ね。一つ一つ手で描かれている」

優子が風鈴をじっくりと見ているとき、私は他の店を見渡していた。

オルゴールを売る店、生ジュースを作る店、ランプを売る店、お面を売る店と、祭りの屋台と商店街がごっちゃになったような雰囲気だった。

私が歩いて見回ろうとすると、後ろから優子につかまれた。

「待って下さい。先に行っては困ります。迷子になったら困りますよ」

優子は私の腕を掴んで私と歩調を併せてゆっくりと歩き始めた。

風に揺られて舞い散る木の葉が夏の風情と供に夏祭りまで呼び寄せたようだ。