白球追いかけて

「どこの病院に行くんですか?」
 スタンドから飛び出してきたケメの声がオレの気を正気に戻した。なぜかそこには青白い服をまとった救急隊。シータがストレッチャーに乗せられる。救急車の赤いパトランプがシータの顔を一定のリズムで照らす。
 シータは、そのパトランプの光を眩しそうにはしなかった。
 だんだんと、遠くに響く救急車の音は聞こえなくなった。そこには、シータのヘルメットだけが残っていた。
 落ちたヘルメットの裏側に『ジュンヤ』と書いてあった。