今日も一人で帰っていると、ゲーセンからヨシナとケメが出てきた。二人とも高二のときのクラスメイト。
「ジュンヤ、久しぶりやん。今帰りぃ~?」
「おう!」
「今、ヨシナとプリクラとったから、あげるな。はいッ」
右手にはとりたてのプリクラ。
「サンキュ」
 とだけ言ってプリクラを受け取った。ハサミで切られたプリクラに目を移すと、ギャル文字が書いてある隣に、ハートマークに埋もれた野球ボールがついていた。
 たまにしか会わなくなったケメだが、そこに写るアイツは可愛く大人びていた。
 女の子は本当にプリクラ好き。普段の自分よりカワイク写るから。でも、プリクラから顔を上げてみるとケメはやっぱ可愛い。このケメの可愛さがいつもどこかで悔しかった。
 無邪気な横顔で、ケメは、
「バイバ~イ」
 と言って、ヨシナとその場を去っていった。しゃべり声がこぼれてくる二人の後ろ姿は、テンションが高く、楽しそうだった。男は背中で語るものだけど、女は背中が車のウーファーのように響いている。そんな感じだった。
”今からどっか行くの?”
 気を利かせて、ケメにそんなことでも尋ねれば、言葉のキャッチボールは簡単にできるし、コミュニケーションもとれただろう。しかし、強がるオレには、ケメの行き先がわかっているのにわざわざ聞く必要はない。
 ケメの行き先はトウサ高校野球部グランド。オレも帰り道は一緒の方向だが、あえて違う方向を通って帰るのだ。