「あちぃ～、あちぃ～」
　口に出せばそれだけ暑くなるのに、その言葉を飲み込むことができず、コンビニに向かう。夏はその道程がとても遠く感じる。
「ジィーン、ジン、ジン、ジン、ジン、ジィーン」目覚まし時計よりも鋭く響く、セミの声。フライパンのように熱された地面。目玉焼きでも作れそうな路上は、足の裏が焦げそうだ。
　たいていはコンビニまで我慢できず、自動販売機でペットボトルを買って一気飲み。
いつもはスポーツドリンクを飲むのだが、今日は売り切れの表示。隣に並ぶコーラが魅力的に見え、ボタンを「ボンッ」とグーで押す。
「ガタンッ」と上から直滑降してきた缶を拾い上げ、口を全開にして、一気飲み。のどに小さな泡がひっかかり、チクチク、パチパチと痛いがゆいのだが、体が水分を求めるので、グビグビ飲める。気がつくと、のどよりも先に腹が水分と気体で満たされ、パンパンにふくらんでいた。
　張った腹でしばらく歩き、ひたすらコンビニを目指して歩く。