安川が見ている先で、向こうから順に、駐車禁止取り締まり員がステッカーを貼っている。
 頭を下げながらすぐに車を移動する人。それを横目に急いでキーを回し、その場を走り去る人。あと数台でこの車まで来る。
 それに気づいたのか、ATMからTシャツにジーパン姿の若い男が出てきて、オレたちの横を駆け抜けていく。
 その匂いを残し、マフラーから「ボォ、ボォ、ボォ、ボォ、ボォ~ン」という爆音を出して、車は去っていった。
 次第にその音も車の姿も小さくなっていく。
「早く免許とりてー」
「ジュンヤは何に乗りたいん?」
「オレは車より、バイク派やな。安川は車やろ?」
「おう、スポーツカー。デートで街中走り回したら目立つやろ」
「そういや、安川。最近、彼女とはどーなん?」
「結構、ラブラブやで!!」
「やっぱオマエらしーわ。照れんと、よう言えるなあ」
 チームのムードメーカー、安川。「試合でもこんだけ余裕があればええんやけど」と思う。