「泣くなよ。…俺、姫の涙に弱いんだから…」
「だって…」
「…断った。」
「へ…?」
「幸太郎、……俺を雇いたいとかなんとか言ってたけど、俺は姫以外に仕える気はないって断った。」



そう言った朔真の瞳はいつもよりも優しく微笑んでいた。



あたしが抱きつくと、朔真は少し驚いた顔をしてから、同じように抱き締め返された。



「…ごめん、ね。あたしのせいで……」
「濡れちゃったこと?」



コクリと頷く。



すると朔真は肩をすくめて、クスッと笑った。



「姫が正直に答えてくれたら、許してあげる。」
「何…?」










「姫の好きな奴って



今…姫が抱きついてる人?」
「だ、だから好きな人なんて……」
「NOなら額、YESなら口にキスして。」



そういうと朔真は目をつぶった。



ドクン…と胸が鳴る。






チュッ──



静かな部屋に軽いリップ音が響いた。