「……」

 私は戸惑いながら、旦那さまに近づく。

 全面ガラス張りでその向こうに美しい絵画のような庭が広がっていた。


 「君が万田美紗緒さんだね」

 旦那さまは私のほうに振り向いた。

 蓮さまに負けない…端正な顔のおじさま。


 「初めまして…万田美紗緒です」

 「掛けてくれたまえ」

 私をソファーに座らせる。

 旦那さまは私の真正面の椅子に腰を下ろした。


 奥からタイミングよく執長の柚木さんが現れる。

 「飲み物は何がいい?」

 旦那様が私に優しく問いかけた。

 「コーヒーで…」

 「ホットかアイスか?」

 「アイスで…」