俺は車を大急ぎで走らせる。


 駐車場で美紗緒さまは鞄を持って立っていた。

 「遅れまして申し訳ございません…美紗緒さま」


 「私の我侭です。気にしないで…拓斗さん」


 「…電話越しのあなたは…涙声でしたが…どうなさいました?」


 「別に…」

 「連さまに何か言われたのですか?」

 美紗緒さまは俺から顔を逸らす。

 「…何か言われたか…あったのですね」

 「……拓斗さんには隠し事出来ないですね」

 美紗緒さんはバツの悪そうな笑みを浮かべる。

 「……ともかく…部屋に帰りましょう」

 「…はい」

 俺は美紗緒さまを車の扉に誘導する。