目の前には、溢れ返りそうな人の渦
修学旅行ぶりの東京の駅は、地元とはやっぱり別世界で
右から左、左から右、どっちを見ても人、人、人
………そんな中なのに、不思議だね
私の目は、いつだってその姿をすぐに見つけることができるの
「樹ーーー!」
周りの人の目なんて気にせず、気がつけば大きな声でその名前を叫んでいた
当の本人は、まさかそんな大声で呼ばれるなんて思っていなかったのだろう
ビクッと肩を上げたと思ったら、私の姿を見つけて、少し呆れた感じで笑っていた
「里菜、お前声でかいよ(笑)」
「ごめん、ごめん
樹見えたから、思わず叫んじゃった」
言葉とは裏腹に、優しく頭をなでてくれた樹
その手が触れた瞬間、やっと会いに来られたんだと実感して、嬉しくて顔が緩んでしまった


