「ぼく、高いところにいきたい‥」



目がしょぼしょぼして、みんながぼやけて見える。



「高いところなら、これからいくらでも連れてってやるよぉ、あんたっ」

「そうだ。また、背中に乗せてやるよ。な?」



風が‥ぼくを撫でていく。



「坊や?」

「う‥?」



ぼくとおんなじ色のお母さん。



「あっちは、どんなところ?」

「色が‥いっぱいの‥お花畑」

「キレイ?」

「うん‥キレイ」



あんまりよく見えないけど、ぼくの顔に、ポツポツと雨が降ってる。



「まんまるくんがね、いたの‥」

「まんまるくん?」

「お話‥できたの」

「そう‥」



雨が‥強くなった気がした。



「帰らなきゃ‥まんまるくんが、独りぼっちで待ってる」

「そっ‥か」



目が‥ほとんど見えなくなった。

ひっく、ひっくと鳴る音と、ポツポツと降る雨が、強くなる。



「‥行っておいで」

「おかあ、さん‥」

「そしてまた、必ずっ、私の子に‥産まれておいで‥っ」




キラキラとした光が、
ぼくを迎えにきた。







「行ってきます」