まんまるにあいにゆくんだ。*34page*

「こんにちは。またお出かけかい?」


もふもふしてる彼女は、今日ももふもふしていた。


「うんっ」

「お。なんだかいつもより上機嫌だねぇ」

「まぁね。それより、なんだか今日は外が暗いね?」

「ん?上を見てごらん」


言われたとおりに見上げれば、昨日まんまるくんを隠していったのとは違う、黒っぽい灰色のふわふわがたくさんいた。


「あれの所為さ」

「あのふわふわは何なの?」

「あれはね、“雲”って言うんだよ」

「雲?」


その雲と呼ばれるふわふわは、もう少しでぼくたちを押しつぶしてしまいそうだ。


「もうすぐ雨が降るねぇ」

「雨?」

「おや。お前は雨は初めてかい?」


ぼくは頭を右に傾げた。


「う‥?雨?」

「雨っつーのはなぁ、」


バサバサと音を立てながら飛んできたのは、真っ黒な友達。


「あ、こんにちは」

「おう!」


陽気に着地して、ぼくと彼女の前に座る。


「あの雲から水が落ちてくんだぜ」

「水!?」

「あぁ。俺なんか飛べなくなるから嫌いなんだよなぁ‥」


水にはぼくも会ったことがある。

ぼくも、あんまり得意じゃないな……。


「そう?私はけっこう好きよ?」

「え!好きなの?何で?」

「そうねぇ。雨が降り終わったら、虹が出るからかしらね?」

「あれは綺麗だよなぁ」


にこやかにそう話してくれる彼女たちだけど、ぼくは虹も知らない。


「ま、そのうち見られんじゃねぇの?」

「ほんと?」

「ふふふ。そうね」


ふたりでぼくの頭を撫でながら、虹について教えてくれたんだ。

雨が降り終わって雲がどいたとき、キラキラ7色に光る橋が出来るんだって。それが虹なんだって。

まるで‥


「まんまるくんみたいだねっ」


綺麗にキラキラ光るまんまるくん。

今日はどんなお話をしようかな?


「「まんまるくん?」」


頭にハテナマークを浮かべながら、顔を見合わせるふたりをすり抜けて、ぼくは待ち合わせの場所へと歩き出す。


昨日は橙だったこの道は、今日はとても灰色で。

もう、すぐにでも

夜が来てしまいそうだった。