「いえ……すみません。忘れて下さい」 そう言って彼女は笑うと、ヒラヒラと手を振った。 「迷子にならない様にお気を付けて」 手を振る彼女にコクンと頷いて返すと、そのまま廊下を歩き続ける。 ……誰を信じ、誰の敵になるのか。 彼女の言葉を反芻したまま長い廊下を進むと、最後に彼女の見せた悲しい笑みが頭の中に浮かび……そして消えて行った。