鬼守の巫女


『魏戎と魏罫。二人はお互い均衡した力を持つ、対なる鬼。魏戎を止められるのは……魏罫しかいなかった』

語り続ける彼女の言葉が、上手く呑みこめない。

頭が混乱し、グラグラと視界が不安定に揺れる中、ドクドクと壊れそうな鼓動を感じていた。

『この結界は……魏戎を封じる為の結界。この結界がある限り、魏戎は力を失い……この世界は安定を取り戻す。その為の結界なのです』

「それじゃあ……それじゃあ魏戎は……」

『貴女を騙しているのですよ。あの鬼は貴女を騙し、この結界を壊した後、必ず世界を滅ぼそうとする。目を覚ましなさい。あの鬼の優しさは貴女を騙す為の嘘。あの鬼の誓いなど……何の意味も持たないという事を』

その彼女の言葉に、頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受ける。

……私は……騙されていた?

……魏戎が……私を騙そうとしていた?