鬼守の巫女


「どうして……魏戎が……」

『魏戎は元々人間を深く憎んでいた。しかしそれを魏罫が抑え、世界はギリギリの平穏を保っていたのです。しかしある日突然、魏戎は魏罫の制止を振り切り村を襲った。ただ本能に突き動かされる様に、壊し、殺し……全てを灰に変えていった。私の村も……私の家族も……全てあの鬼の手により失ったのです』

彼女のその言葉に、ただ茫然と立ち尽くす。

『この世は混沌を迎え、鬼達が好き勝手に暴れ回る世界へと変わって行った。……しかし誰にも止められなかった。あの鬼の力は世界を滅ぼせる程の力。人間如きの力では太刀打ちなど出来なかった。だから私は……この鬼を……魏罫を結界にしたのです』

彼女はそう言って悲しそうに笑うと、目を閉じている男の髪を愛おしそうに撫でた。