鬼守の巫女


「つまりはあの鬼……《魏戎》を封じる為にこの結界は存在しているという事だ」

朧源のその言葉に、ゴクリと息を呑む。

「どうしてそんな事を……」

「あの鬼は……世界を滅ぼそうとしたんだよ。遠い……遠い昔にな」

朧源はそう言うと、残った五つの石を取り出し、それを見つめたまま悲しそうに笑う。

「鬼の一族の中でも最強の力を持つとされた魏戎と魏罫は、人の寄りつかない深い森の中でひっそりと生きて来た……争い事の嫌いな鬼だったそうだ」

朧源の語る魏戎の過去の話を、ただ静かに聞き続ける。