鬼守の巫女


「朧源様は昔から私に大事な事は教えてくれない。私はいつも好き勝手な事をしていましたから……いつも重要な事はなかなか話しては下さらなかったのです」

そう言って彼女は困った様に笑うと、また小さく息を吐いた。

「なのでこれは私の憶測ですが、恐らく彼は……貴女に新たな結界を張らせようとしているのだと思います」

「新たな……結界?」

「はい。今の結界……初代の巫女が封じた鬼の力はもうほとんど薄れてしまっている。長い時が流れ、巫女を失った今の結界はもう力を失いつつある。いくら寿命の無い鬼の力とは言え、決して無限ではない。もうあの結界は……限界を迎えようとしているのです」

彩乃さんはとても真剣な顔をしてそう言うと、静かに私を見つめた。