「失礼します」 急に聞こえた男の声と共に、部屋の襖が静かに開かれた。 「……土室さん」 襖の先から現れた彼の名を呼ぶと、土室さんは少し悲しそうに瞳を揺らして深く頭を下げた。 「一緒に……来て頂けますか」 土室さんはそう言うと、窺う様に私を見つめる。 「……一体、何処に?」 窓から空を見上げたままそう小さく問い掛けると、彼は泣き腫らした私の目を見て、また悲しそうな顔をした。