「……な、何?」
ビクリと身を竦め、キョロキョロと辺りを見回すが……何も変わった所は無い。
……気のせいか。
ホッと息を吐いたその瞬間、曲がり角から一人の男が姿を現した。
その男の姿を目で捉え、ゴクリと息を呑む。
透き通る様に白い肌。
微かに吹く風に靡く銀色の髪。
そしてまるで人形の様に整った顔。
その顔に妖艶な笑みを浮かべたその男は月明かりに照らされ、静かにゆっくりと私に近付いて来る。
その男から目を離せないまま、ドクドクと心臓が壊れそうな程鼓動を速めた。
……な、何なの?
ギュッと強く鞄を抱き締めたまま、迫り来る男の姿を見つめる。



