「だから玲は馨を連れて逃げようとしたんだ。馨に本当の空を見せたくて全てを捨てようとした。でも……」 火伏さんはそこまで言って声を詰まらせる。 「……でも?」 そう小さく問い掛けると、彼は小さく息を吐いて口を開いた。 「でも……馨は来なかった。逃げようと誓った約束の場所に……馨は来なかったんだ。……それだけ。それで俺の知ってる事は全部だ。本当は何があったのかはあの二人にしか分からないよ」 火伏さんはそう言って困った様に笑うと、もう一度大きな溜息を吐く。