「元々二人の母親がさ、とっても仲のいい親友同士で……丁度同じ時期に子供を生んだ。それが玲と馨なんだ。玲の母親はよく玲を連れて樫月家に出入りしていたし、二人はいつも一緒に遊んでいたよ。《玲》って名前も、あの銀色の犬がいるだろ?樫月家の式神《糺(レイ)》から取ってるんだぜ?」
火伏さんはそう言うと、少し悲しそうに笑って窓から空を見上げる。
「でも成長するに従い、何をするでも一緒だった二人はお互いの立場の違いを認識した」
「……立場?」
「外の世界だよ。馨は……樫月家の当主は外の世界には出られない。本当の空を知らず、本当の太陽も月も、吹き抜ける風も知らない。馨はずっと憧れていたよ。……外の世界に」
火伏さんは悲しそうに空を見上げたまま微かに笑う。



