「絶対に嫌……」 「私も嫌に決まっているだろう」 私の言葉を遮って、男が呆れた様に息を吐いた。 ……何か……ムカつく。 男の態度に何故か女のプライドが傷付き、心の中で小さく舌打ちをする。 「この話は今は考えなくてもいい」 男はそう言ってシッシと小さく手を振ると、真剣な顔に戻った。 「それよりも……《鬼》だ。今日、お前の前に現れた男。あれが《鬼》だ」 「あの変態男が……《鬼》?」 あの月の光に照らされる男の姿を思い出す。 妖艶で美しい……あの男。 ……あれが《鬼》