「お前を殺して心臓を喰らってしまおう。……そう、何度も考えたさ」 魏戎はそう言うと少し自嘲気味に笑って、月を見上げた。 「お前に会ったあの夜……お前の喉に手を掛け、俺は何度も決意を固めた。でも……出来なかった」 魏戎はそれだけ言うと静かに私を見つめる。 「俺にはお前を殺す事が出来なかった。だからお前を懐柔して、結界を壊そうと考えた。……それだけだ」 そう言って魏戎は笑うと、そっと私に手を伸ばす。 彼の白く長い指が私の頬に触れ、彼の赤い瞳が私を真っ直ぐに見つめる。