「……火伏さん」

小さく彼の名を呼ぶと、火伏さんは私に向かってヒラヒラと手を振ってニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

しかしそれを咎められる様に左右の男にドンと肩を叩かれる。

それに彼は不機嫌そうに眉を顰めると、そのまま壇上へと向かって行く。

彼の手足にも父と同じ様に枷が嵌められていて、彼はそれをウザったそうに引き摺りながらノロノロと歩き続けている。

……思っていたよりも元気そうだ。

前と変わらない彼の姿に少し安堵し、ホッと息を漏らした。

それに被せる様に隣に座る眞水さんが大きな溜息を吐く。

「……元気……そうですね」

そっと声を掛けると、眞水さんは呆れた様に笑い……「全くだ」と小さく呟いた。